コードネームの限界を超えろ!山本式和音番号が拓く音楽分析の未来
このブログを読んでくださっているあなたは、きっとExcelの奥深さに魅せられた「暇つぶし」の達人のはずです。
今回から始まる新シリーズは、そんなあなたの知的好奇心をこれまで以上に刺激する、壮大なプロジェクトの幕開けです。
テーマは、音楽の「和音」。
そして、その和音の構造と役割を解き明かす、全く新しい表記システム「山本式和音番号」を、Excelで構築するという、壮大な挑戦です。
著者の名字が「山本」であることから、このような名前になりました。
演奏と分析、コードネームの目的は違う!
作曲家と演奏家の「見ている世界」の違い
まず、あなたがギターやピアノでコードを弾くとき、「Gのコードを弾いてください」と言われれば、すぐにその音が出せるはずです。
構成音は「G(ソ) H(シ) D(レ)」ですね。

コードネームは、演奏者が瞬時に和音を把握し、音を出すために最適化された、非常に優れた表記法です。
しかし、このコードネームには、ある「限界」があります。
例えば、あなたが弾いたコードネーム:Gが、C dur(ハ長調)のGなのか、それともG dur(ト長調)のGなのか、その「調における和音の役割」までは教えてくれません。
演奏者はそれで構いません。
極端な話、クラシック音楽に登場する「ドイツの増6和音」を理論に則って正確に表記すれば「D7(-9)(-5)/A♭かつD音省略」などと、もはや暗号にしか見えない複雑極まりないものになります。
「ドイツの増6和音」の構成音:「As Es Fis C」
実用性を重視した音の配置で表記しています。

ですが、演奏者にとっては、異名同音(違う名前でも実際は同じ音)をうまく利用して、単に「A♭7」と表記された方がよほど親切です。
「A♭7」の構成音:「As Es Ges C」

瞬時の演奏を可能にすること、それがコードネームの最大の目的です。
「山本式和音番号」が示す「和音の役割」という手引き
しかし、作曲者や和音分析を行うクリエイターにとって、話は全く別です。
各和音の構成音だけでなく、その「調における役割」が非常に重要になります。
トニックのGなのか、サブドミナントのGなのか、あるいはVのV(ドッペルドミナント)のGなのか。
これが分からなくては、曲の調判定も、和音進行が持つ本当の意図を理解することも難しいのです。
私が提唱する「山本式和音番号」は、この「和音の役割」を明確にするために生まれました。
一つの調で複雑な借用和音と見なすよりも、
「転調」と見なして解釈するという、よりクリエイティブな視点を採用します。
なぜなら、このプロジェクトの最終目標は、クリエイターにとって有用なツールとなり、様々な和音進行の可能性を提示することだからです。
だからこそ、セカンダリードミナントなどについても、和声学で通常扱う範囲に限定して、シンプルに捉え直します。
例えば、ポピュラー音楽で頻繁に使用されるF→Dm7/G→Cのような終止形には、「まーたあーしーたー(A—AA–C–C—-)」というメロディーを思い出させることから「また明日終止」などと、親しみやすい独自の名前をつけてパターン化していきます。

これは、クラシック音楽の「アーメン終止」などと同じ発想ですね。
言語の壁もフォントの壁も越える!「山本式和音番号」の普遍性
コードネームを超えた「世界共通」の和音表現を目指して
そして、この「山本式和音番号」の最大のメリットの一つは、その「普遍性」にあります。
通称「芸大和声」のような、表示に特殊なフォントを必要とする表記法は、
共有や利用の際に大きな壁となります。

その点、山本式和音番号の表記はすべて数字、アルファベット、そしてごく簡単な記号のみで構成されます。

これは、どの国のどの端末でも、仮に日本語入力ができなくても利用可能な、まさに「万能ツール」なのです。
私は、この「コードネームを超えた和音の役割を表現する方式」を、
新しい世界共通のスタンダードとして普及させたいと本気で思っています。
パッヘルベルのカノン冒頭で見る「山本式和音番号」の力
ここで、山本式和音番号の力を示す、有名な一例を見てみましょう。
パッヘルベルのカノン冒頭(D dur =ニ長調)の和音進行です。
コードネーム表記: D A Bm F#m G D Em/G A
山本式和音番号表記: 1 5 6 3 4 1 21 5
このたった数桁の数字の中に、和音の構成音はもちろん、
調における和音の役割までが凝縮されているのです。
基本的な音楽理論を習得すれば、
誰もがこんなにも簡単に和音の役割を把握できるようになります。
そして、慣れれば、この番号だけを見て伴奏をすることも可能です。
実は私も、実際に伴奏をする際は、脳内でこのような番号に変換して考えています。
STEP1:山本式和音番号の「基礎の基礎」を学ぶ!和音の「役割」の表し方
壮大な話は一旦ここまでにして、ここからは山本式和音番号を構成する、
具体的なルールを学んでいきましょう。
まずは、全ての土台となる「調(キー)」の表現方法からです。
ドイツ音名で調を表す 調号の数で「キー」を決める!
なぜドイツ音名を使うのか?
このプロジェクトでは、調や音名を「ドイツ式音名」で統一します。
これは、C, D, E, F, G, A, H(ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー)という表記のことです。
なぜなら、和声学の専門書は、その多くがドイツ式音名で書かれており、
クラシック音楽の世界ではこれが共通言語だからです。
ただし、最終的にExcelで生成するコードネームは、
ポピュラー音楽で一般的な「英式」(例: H durのⅠの和音はB)で表示しますのでご安心ください。
調号数のマッピングルール
山本式和音番号の根幹をなすのが、調(キー)を「調号の数」で表現するというルールです。
シャープ(♯)系の調: 正の整数で表現します。
C durを基準の 0 とし、シャープが1つ増えるごとに数字が1つ増えます。(例: 1 は G dur, 2 は D dur, … , 7 は Cis dur, 8 は Gis dur, 9 は Dis dur)
フラット(♭)系の調: 負の整数で表現します。
フラットが1つ増えるごとに数字が1つ減ります。(例: -1 は F dur, -2 は B dur, … , -9 まで)
短調(moll)のキー: 対応する平行長調の調号数に m を付け加えます。
(例: a moll は C dur と同じ調号数0なので 0m、c moll は Es dur と同じ調号数-3なので -3m となります)
今後の記事で、このルールに基づいたマッピング表をExcelで作成していきます。

STEP2:C durで試そう!Ⅰ度からⅥ度までの和音表記ルール
キーの表現方法がわかったところで、次はいよいよ和音そのものを数字で表すルールを見ていきましょう。
最も分かりやすいC durを例に、基本となる和音の表記法を解説します。
調の主音から始まる「度数」の概念
和音の「骨格」となるⅠ度からⅥ度
まず、どんな調にも、その調の基準となる「主音(Ⅰ度)」から始まる、
主要な和音のグループがあります。
これを「度数」と呼び、通常はローマ数字(I, II, III…)で表します。
山本式和音番号では、この度数を以下のアラビア数字で表現します。
- Ⅰ度: 1
- Ⅱ度: 2
- Ⅲ度: 3
- Ⅳ度: 4
- Ⅴ度: 5
- Ⅵ度: 6
[重要!] なぜⅦ度は扱わないのか?
ここで重要なルールがあります。
山本式和音番号では、基本的にⅦ度を独立した度数として扱いません。
なぜなら、Ⅶ度の和音(例: C durにおけるBdim)は、その響きや機能から、他の調の和音(例えばⅤ度の和音の変形など)として解釈した方が、作曲や分析を行うクリエイターにとって、和音進行の可能性が広がり、より有益だと考えるからです。
「複雑な和音は、よりシンプルな調の組み合わせとして捉え直す」というのが、
このプロジェクトの重要な思想の一つなのです。
C durにおけるⅠ度からⅥ度の和音表記
それでは、C durを基準として、各度数の山本式和音番号と、それに対応するコードネーム、そして構成音を具体的に見ていきましょう。
- C durのⅠ度: 山本式和音番号は 1 → コードネームは C (構成音: C E G)
- C durのⅡ度: 2 → Dm (構成音: D F A)
- C durのⅢ度: 3 → Em (構成音: E G H)
- C durのⅣ度: 4 → F (構成音: F A C)
- C durのⅤ度: 5 → G (構成音: G H D)
- C durのⅥ度: 6 → Am (構成音: A C E)

これらが、山本式和音番号の最も基本的な「骨格」となります。
まとめ:作曲の羅針盤「山本式和音番号」の世界へ、ようこそ!
今回は、壮大なプロジェクトの序章として、山本式和音番号が生まれた背景とその目的、
そしてシステムの根幹をなす基本ルールについて解説しました。
Excelで和音の「役割」を見える化するプロジェクト始動!
この記事を読んで、コードネームが持つ限界と、それを超える「山本式和音番号」の壮大な目的をご理解いただけたことでしょう。
これで、Excelを使って和音の秘密を解き明かすための「共通言語」と「設計図」が、私たちの手に入ったことになります。
「和音の『役割』を見える化する」という、壮大な旅の第一歩を、今まさに踏み出したのです。
もちろん、山本式和音番号は、今日紹介した和音の骨格だけではありません。
7thや9thといった和音の種類、転回形、そして複雑な借用和音や根音省略までをも、
数字と記号の組み合わせだけで表現できるのです。
次回の記事では、いよいよ山本式和音番号の真髄に迫ります。
そして、様々な和音の構成要素を表現する詳細なルールと、それらをExcelでコードネームに変換する具体的なロジックの構築に挑戦します。
次回の記事も、ぜひご期待ください!